高脂血症―(特に中性脂肪を中心として)について 副院長 阿部 敏紀
- Q動脈硬化で亡くなる人がガンを上まわるというのは本当ですか?
- A 日本ではガンで亡くなる人がいちばん多いのですが、動脈硬化が原因となる心臓病と脳血管障害で亡くなる人を合計すると、ガンを上まわります。 動脈硬化の最大の危険因子、それが高脂血症で、糖尿病や高血圧をを合併すると危険度が増し、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満は「死の四重奏」と呼ばれています。 動脈硬化を促進する脂質として、これまで主にコレステロールが指摘されてきました。血中に悪玉(LDL)コレステロールが多い場合、善玉(HDL)コレステロールが少ない場合、さらには超悪玉コレステロール(小型LDLや変性LDL)の出現などです。しかし、最近になって、中性脂肪もコレステロールに劣らず動脈硬化の危険因子であることが分かってきました。血中に中性脂肪が多い時は、超悪玉リポ蛋白(レムナント:脂質の中間代謝産物)が増えている場合が多く、食後に一時的に中性脂肪が増加する状態も問題視されています。
- Q 中性脂肪の数値が高くなるのはどうしてですか?
- A 血液中の中性脂肪の値が基準値(150mg/dl未満)よりも高い状態を高中性脂肪血症といいます。主な原因は次の三つです。@血液中の脂肪値を上昇させる生活習慣。A糖尿病や肥満、時に腎臓病、肝臓病などの高中性脂肪血症を二次的に生じる病気。B遺伝的な素因。 このなかで、いちばん多いのが@のケースであり、その問題となる生活習慣は、何といっても「食べすぎ」「飲みすぎ」「運動不足」です。Bのケースは少ないですが、高脂血症や動脈硬化が原因となる病気の発症が、やせている人や若年者や、家系的に多い場合は要注意です。高齢者の場合でも、高脂血症があれば、その原因精査はおこなって、親族のためにBの遺伝的素因の有無はチェックしておくべきでしょう。 さらには、喫煙や過剰のストレスも動脈硬化の危険因子となっており、心筋梗塞や脳梗塞の引き金となることがあります。当院では、禁煙外来を設けております。
- Q 高中性脂肪血症のセルフチェックを紹介して下さい。
- A 次の項目は高中性脂肪血症の危険因子です。当てはまることはありませんか?
- 血圧が高い(140/85mmHg以上)
- 太っている(BMIが25以上)
- 1日1回は甘いものを食べる
- アルコールをたくさん飲む(1日に日本酒1合、またはビール中ビン1本以上)
- 肉が好きで魚はあまり食べない
- タバコを吸う
- ストレスが多い
- 運動はほとんどしない
- 家族に高脂血症の人がいる
- 40才以上である。
Q 高中性脂肪血症と診断されたら、どうしたらいいですか?
- A 動脈硬化がどの程度進んでいるかを調べる必要があります。当院では、心臓の冠状動脈(心電図、心エコー)、脳動脈(頭部CT・MRI、眼底検査、頚動脈エコー)、腹部大動脈(腹部エコー)、上下肢動脈(血圧脈派検査)などの動脈硬化の程度を検査しています。ただし、頭部MRIは都立大塚病院やクリニック滝野川内科に依頼しております。
- Q 食事療法について教えて下さい。
- A 食事に関して、コレステロールを多く含む食品を多く摂取すると、血中にコレステロールが増加します。中性脂肪の場合は、脂肪の多い食品も要注意ですが、糖質(特に砂糖と果物)を食べすぎたり、アルコールを飲みすぎたりすると、血中に増加します。 1日の摂取エネルギーは標準体重(kg)×25〜30(kcal)を目安にします。過量の砂糖や果物などの糖質や酒を控え、食物繊維、ビタミンE・C、カロチン、緑茶や紅茶にたくさん含まれるフラボノイドやカテキンなどはお薦めです。 具体的には、糖質はなるべく穀類でとり、油脂は不飽和脂肪酸を多めに、間食も砂糖源なので止めること、果物は1日200g(みかんなら小3個、りんごなら大1個)以内に、肉は脂肪の少ないもの、魚は1日1回は食べたいところ、野菜は1日350g、牛乳は低脂肪、節酒・禁酒とし外食は残すことを考えることなど。 欠食は太りやすいので「まず3食きちんと食べることから始めよう!」脂肪は夜つくられるので、「夜8時以降、遅くとも9時以降は、または就寝前の3時間以内はカロリーのあるものは飲まない、食べない!」「夜間の果物やジュースは最悪で、日中摂ってください」「その次は間食をやめて、それでも効果なければ3食控えめに」と外来でよく患者様に説明しています。
- Q 運動療法について教えて下さい。
- A 運動は脂肪を燃やすだけでなく、糖代謝(インスリン作用)や脂質代謝(リパーゼ作用)を改善し、血圧降下作用やストレス解消にも役立ちます。また、睡眠中のエネルギー消費量を高めます。 具体的には、せめて1週間に3〜4回の有酸素運動が必要で、1週間に700〜1000kcalを運動で消費しましょう。体重60kgの場合、軽いジョギングなら18分、早足なら39分で150kcalを消費します。階段を10段上がると約1kcalを消費し、1日100段なら10kcalですが、運動によるエネルギーの補正係数は軽いジョギングとほぼ同じなので、階段上がりが1日合計18分ならば、150kcalの消費です。いろいろな工夫をして、日常生活での運動量をアップしましょう。
- 最後に、動脈硬化の進行を阻止して、いつまでも若々しい血管を保ちましょう。
- 〔参考〕 「中性脂肪をみるみる減らすハンドブック」 井藤英喜監修 2002年9月10日発行 永岡書店(非売品) 〔付録〕 2003年4月号の「The Lipid」に、症例報告として、「妊娠および分娩後に特異な脂質代謝異常を呈したPBCの一例」が掲載される予定です。著者は、阿部敏紀(日心会総合病院一心病院内科)、山口守道(同)、栗原毅(東京女子医科大学付属成人医学センター助教授)、中野隆光(日本抗体研究所)です。(PBC:原発性胆汁性肝硬変の略)

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