「親学の必要性」 小児科 高橋 えみ子
「現在、学校でも大学でも教えていないのは親になる方法だ。社会はこの親になる教育にもっと関心を向け、親としての自分を向上させることが大切である」これはオックスフォード大学ジェフリー・トーマス学長の言葉です。今、先進国での親のあり方、家族のあり方が問われているのではないでしょうか。親としての学び「親学」の必要性についてお話したいと思います。
- Q 子育てのストレス、悩みを抱えた母親が多いと聞きますが、その原因は何ですか?
- A戦後の日本社会は、経済至上主義、競争原理によって成り立っています。それは子供、老人、障害者、子育て中の母親など、社会的に弱い立場にある人々にとって厳しい社会です。国の子育て支援策も女性が働きながら子育てできるようなものが主です。
また、昔のように家族が多かった時代では、自分が親になる前に幼い兄弟の面倒をみたり、子供と接する機会があり、それが貴重な子育て体験になっていました。親になった後も家族や地域の人たちなど、多くの人が子育てにかかわってくれたものです。それが今では核家族が増え、少子化が進んだことにより、ほとんどの人が体験もないまま親になり、結果的に育児は母親一人の仕事に偏りがちです。家族のみならず、学校や地域の子育て機能も低下しています。
- Q どんな対策が必要でしょうか?
- A自治体や民間でも様々な子育て支援の取り組みがなされていますが、母親の子育ての負担を減らすこと以外に、親が親としての役割を果たせるような援助が必要です。また、親となるずっと前から、親になるための学びの機会を得ることが大切です。義務教育の中でこうした学習の機会をぜひ作ってほしいものです。
- Q 先生自身、どのような取り組みをされているのですか?
- A私が講師を務めているNPO日本子育てアドバイザー協会では、子育てに関心を持つ人々を対象に、小児科医や臨床心理士、虐待の専門家などによる講座を開いています。そして子育ての悩みを抱えた親の心に寄り添い、良き相談相手になれるアドバイザーを養成しています。受講者は保育士が多いのですが、中には自分のために受講している母親たちもいます。
また、3年前に「親学会」を設立し、親になるための学びの場として、定期的に講演会や勉強会を開いています。8月に「親学のすすめ」(モラロジー研究所)という本を出版しました。一心病院の産科が親子の絆作りのために行なっている出産立ち会いやカンガルーケアについて紹介しています。
- Q 子育てで一番大切なことは何ですか?
- A乳幼児期に親子の心が通い合うのに必要なスキンシップ、コミュニケーションを十分持つことです。そして赤ちゃんにも喜怒哀楽、快不快、好き嫌いの感情がありますから、そのありのままの感情を親が受け止めてあげることです。そうした日々の積み重ねのなかで子供は人間関係の基礎になる“安心感”“安全感”“信頼感”を学び取り、自己肯定できる能力が身につくのです。
- Q 自己肯定感を持てない子供が増えているそうですね。
- A乳幼児期の親子関係に起因するところが大きいでしょう。しかしその時期を過ぎても子供の心の問題に気づいた時点から、親子関係を修復することは可能です。親が我が子の姿を通して見るのは自分と親との関係。自分が親にどのように育てられたかという問題に直面します。人は両親や祖父母の未解決の問題を受け継ぐ傾向があります。「家庭の問題」は家族内では解決しにくい場合が多いので、カウンセリングを受けるのも良い解決方法です。当院小児科でも、月、水曜日の夕方にカウンセリングを予約制で行なっていますので、気楽にご相談下さい。
最後に子供にとって最大の癒しは母親です。そして最大のストレスも母親です。それほど子供にとって母親の存在は大きいのです。親自身が上手にストレス解消しながら、子供のいる今の人生を楽しんでほしいですね。
書籍紹介
「親学のすすめ」胎児・乳幼児期の心の教育
(親学会編:モラロジー研究所)
この著書の中に高橋えみ子先生も執筆されています。
「子育てには知識や経験以上に、親の感性が大事です。言葉をまだ話すことのできない赤ちゃんの気持ちを表情や体の動き、泣き声などから読み取るような感性です。 (第二章 親と子のきずな─小児医療の現場から)より」
※一心病院売店にて販売中 |

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